「読書離れ」が問題となっている中で、本を読むことをもっと気軽に楽しもうとする興味深い活動を見つけました。「世界中を図書館に!」という合言葉がとても印象的な、「ブッククロッシング」という活動でした。
本を愛する人たちによる「本に世界を旅させる」活動をブッククロッシングといいます。読み終わった本にBCID番号を記入したステッカーを貼り、友達に渡したりわざと置いてきたりして、本を旅させてその行方を追跡しよう、という活動です。
まだ、日本ではあまり浸透していませんが、アメリカを中心に世界規模で取り組んでいる、大きな活動です。私も偶然その存在を知り、インターネットで調べたところ、
「ブッククロッシング・ジャパン」というホームページにたどり着きました。大変興味を惹かれ、すぐに広報部の藤岡恵理子さんに連絡を取りました。
Book Crossingのロゴマーク
ブッククロッシングについて
――ブッククロッシングを始めようと思った理由・きっかけは何ですか?
藤岡 代表の財津は、書店営業と出版エージェント(
潟Cーセット)として日々、書籍に関わっており、梅田望夫さんの「ウェブ進化論」でブッククロッシングを知り、日本でも普及させたいと思ったようです。
私は、
朝日新聞の記事で「世界中を図書館に!」というキャッチコピーが目に留まり、おもしろそうだなと思ったことがきっかけでした。その後、財津と知り合い、誘われるままに活動に参加して今があります。たぶん財津と知り合うことがなかったら、今ほど深入りはしていなかったかもしれません。広島と神戸で毎日、遠隔操作されています。(笑)
――ブッククロッシングを行う意図は何ですか?
藤岡 ズバリ!読書人口の増加を目指し、読書の入口、きっかけづくりとして活用して欲しいと願っています。近年の活字離れ、読書離れといったことで出版不況だとよく言われていますが、読書人口は決して少なくはないと思っています。
ただ、本は毎月溢れるほど出版されるにもかかわらず、なかなか良書に出会うことができなかったり、好きなジャンルが偏っていたり、読書のきっかけがつかめないといったことで本から遠ざかってしまうのではないかなと思います。その点では、ブッククロッシングは、偶然に予期しない場所で予期しない本と出会うことで読書の1つのきっかけとなりますし、今まで読んだことのない初めてのジャンルや作家の作品にふれるチャンスにもなります。
そして、公式サイトのジャーナルで本の現在位置や感想を書き込むことで1冊の本を中心に本の情報を共有でき、人と人がつながりを感じることができます。インターネットの環境がない人にも感想を書き込めるように
「手書きリリースノート」を挟み、活用してもらうといった試みも行っています。
本の新しい楽しみ方の1つとして「自分の大切な本に世界中を旅させる」という夢のある活動に参加することで、偶然に本と出会い、人と出会えるというのが一番の魅力ですね。
――海外ではどの程度広まっていますか(アメリカが主に活動しているが、他の国でも広まっているのか)?
藤岡 世界の国や地域を含めた現在の
会員数のリストをご覧ください。日々、更新されています。アメリカをはじめ、イギリス、ドイツ、イタリア、フランス、スウェーデン、中国、韓国など多数あります。
本に貼るラベル
ブッククロッシング・ジャパンの運営
――ブッククロッシングの運営について詳しく教えてください。1.ブッククロッシングのウェブサイトでの広告収入 2.「リリースキット」「Tシャツ」などブッククロッシンググッズの販売 3.ブッククロッシングの活動に協賛・ご理解いただいた企業との提携 の3つのうちどれが主となっているのか、など。
藤岡 現在、運営費については、ほとんど財津の会社潟Cーセットからの持ち出しになっています。ここが一番、厳しいところですね(笑)。グッズの販売も運営費に充てられていますが、全体を支えられるほどのものではありませんし、決まった広告収入、協賛企業との提携なども今のところありません。今後の大きな課題ですね。
――どのようにして本の行方を追跡しているのですか(ラベル・BCIDについて)?
藤岡 ブッククロッシングに登録された本が手元にある場合は、
公式サイトへ行き、BCIDを記入して検索するとジャーナルが記入できるようになります。そこへ記入すると、アメリカ本部経由でジャーナルが書き込まれたことを知らせるメールが本の元の持ち主、読んでリリースした人たち全員に紐付けされて届きます。
――会員の方にはどういった人がいますか?
藤岡 詳細については、よくわかりませんが、30代の女性を中心に年齢層も幅広くなっています。以下は、各都道府県別の人数です。両方を足した数字が現在の日本の会員になります。
・
各都道府県別の人数1
・
各都道府県別の人数2
――ブッククロッシングゾーン以外に本を置くことは可能ですか?
藤岡 ナチュラルリリースと呼んでいますが、駅やカフェ、公園のベンチなど、誰かの目に留まりそうな場所に置くこともできます。ただ難点は、まだ認知度が低く、落とし物やゴミとして処分されてしまうことがありますので要注意です。
先日もナチュラルリリースされた本が落とし物として東京の警察署へ届き、広島の本部へ連絡をいただき、無事に本部へ送り届けられました。このように警察署の方が親切に探してくださるといいのですが、たいていは捨てられたり、迷子になってしまうことが多いのです。ほんとは持ち帰って本のラベルを見て、サイトへアクセスして欲しいところですが。(笑)
――雑誌やコミックなどの書籍以外も登録することは可能ですか?
藤岡 CDブックなどISBNのあるものは、登録できます。
――現在行っている活動(イベントなど)はありますか?
藤岡 基本的には、全国のサポートリーダーやゾーンがそれぞれマイペースで
活動をしています。たとえば、リュックサックマーケットへの出店、一箱古本市、カタリベカフェをはじめ、8月には
「高遠ブックフェスティバル」、11月には
「お好み本ひろしま2009」に参加します。
――ブッククロッシングを始めてから出てきた問題点・課題はありますか?
藤岡 本が持ち帰られるばかりでゾーンの維持が難しいこと、ジャーナルの書き込みがされないままで本の行方が掴めないことなどですね。インターネットに不慣れな方もおられるし、本の登録が面倒くさいと言われる方が多いのが難点です。確かに面倒なんですが、自分の大事な子供を旅に出すような感覚ですから、自分のリリースした本が今、どこにいて、どんな人に読んでもらっているのかを知ることができます。その苦労もいつか報われると思うんですが、意外と出だしで転んでるところがありますね(笑)。
――現在、何人ぐらいでブッククロッシングの運営を行っていますか?
藤岡 正式な運営スタッフとしては、代表の財津と広報の私の2人です。サイトに掲載しているもう1名の広報は、11月のイベントの広報担当として名前を掲載しており、終了後には、またサポートリーダーに戻ります。
あと、外注でサイト担当と通訳・翻訳担当のスタッフが1名ずついます。少数精鋭すぎる(笑)運営スタッフが全国のサポートリーダーの皆さんに助けていただいているといった感じですね。
Book Crossingの本棚
今後の取り組み
――今後の目標、課題について教えてください。
藤岡 まずは、認知度を上げることが最大の目標です。会員25,000人、公式ゾーン500ヶ所を目標に掲げていますが、これが達成された頃には、ブッククロッシングの認知度は飛躍的に向上していると思います。目標達成のためには、まずはブッククロッシングの重要な発信基地である公式ゾーンの開拓・推進とともに、それぞれのゾーンが抱える問題を解決していくことが重要だと考えています。
ゾーンが個々に抱える問題点は違うのですが、本がすぐなくなってしまい、維持が難しいとか、本があるのに全く動かないといったこともあり、ゾーンでいかにPRをしてゾーンであることをお店や会社にとってのメリットに変えていけるか、また他のゾーンや会員とのつながりを作っていくかといった取り組みが必要だと感じます。
現在、ゾーンの現況調査アンケートを実施していますが、現在稼働中のゾーンのリストアップとそれぞれが抱える問題・課題の抽出をし、その対策を一緒に考えて解決していこうというのが、その意図です。まだまだ未完成な部分が多いのですが、全国のサポートリーダーの力を結集し、会員も巻き込んでゾーンの運営を後押しできるしくみづくりをしたいと考えています。
――今後何か取り組むものがあれば、お書きください。
藤岡 ゾーンやサポートリーダーをはじめ、会員も含めてブッククロッシング・ジャパン内部の足場固めをしていくと同時に、外部との連携によって、さらに拡大・推進を図りたいと考えています。
余談ですが、この夏以降、
ブクログとの連携をするべく協議に入る予定です。これがうまくいけば、もっとビジュアルに自分の本棚が見れるようになり、会員同士の交流や仮想ゾーンとしての役割も担わせることができるのではないかと考えています。個人的には、ちょっと楽しみにしています。
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取材をして感じたことは、本当に本が好きな人が集まることによって成り立つ、すごく温かい活動なのだということです。ブッククロッシングが日本中に浸透すれば、本と出合う良いきっかけになるのはもちろんのこと、日本人同士に大きな仲間意識が生まれるのではないでしょうか。ブッククロッシングは、本を通したコミュニケーション方式の1つとも考えることができる、素敵な取り組みだと感じました。
自分が気に入っている本を旅立たせるというのは、少し寂しい気もしますが、それによって返ってくるものはとても大きいのだとしたら、この活動に参加したいと感じました。みなさんも一緒にブッククロッシングに参加して見ませんか。