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『閉塞時代に挑む』の感想

林田力2009/03/05
 新左翼活動家による社会主義の研究成果のまとめである。マルクス主義を批判的に再検討し、新しい社会変革の指針を示している。マルクス主義が再評価される中で暴力革命をどのように考えるか、著者は民主制の歴史的意義を踏まえ、法に則った社会変革、「則法革命」を目指す。現代日本で社会主義を実践する上で理論的支柱となる。
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著者:村岡 到<br>
出版社:ロゴス社<br>
定価:1000円+税<br>
発行日:2008年10月7日
著者:村岡 到
出版社:ロゴス社
定価:1000円+税
発行日:2008年10月7日
 本書は新左翼活動家による社会主義の研究成果をまとめたものである。マルクス主義を批判的に再検討し、社会変革の指針を示している。

 歴史とは過去の積み重ねである。過去と連続している面がある一方で、断絶している面もある。どこに連続性と断絶を見出すかによって、人の認識は大きく変わりうる。本書は連続性と断絶について非常にユニークな視点を提供する。

 最初に連続性についてである。マルクス主義者は自らの社会主義を科学的社会主義とし、それ以前の社会主義思想を空想的社会主義と切り捨ててしまう傾向にある。これに対し、本書ではマルクスやエンゲルスのみを突出させるのではなく、それ以前の思想も丹念に拾って、歴史の流れを俯瞰する。

 この先人のロゴスに耳を傾けるという著者のスタンスは、生存権の研究で成功している。生存権はワイマール憲法を嚆矢とする現代的な権利と説明されることが一般的だが、本書は1793年のジャコバン憲法に生存権の源流を見出す。また、革命家バブーフが生存権を自然権と位置付けていたことを明らかにする。

 派遣切りによって派遣労働者が住む場所も失い路上生活を余儀なくされる現代日本において生存権の意義は非常に大きい。しかし、社会的要請に憲法学は十分に対応できていない。それは生存権を国家によって保障される社会権・後国家的権利として、表現の自由のような自由権・前国家的権利の一段下に位置付ける傾向があるためである。本書が明らかにした生存権の歴史性は、生存権を真の意味で有効な権利とするための理論的な下地となりうるものである。

 次に断絶についてである。唯物史観では人類の歴史を階級闘争の歴史と位置付ける。そして国家は支配階級が被支配階級を抑圧するための機関と考える(階級国家論)。この思想を信奉するならば資本主義社会における国家はブルジョアによる支配の道具であり、それを打倒することがプロレタリアの階級闘争になる。

 これに対し、本書ではブルジョア革命前後での政治的支配の差異に注目する。奴隷制社会や封建制社会では支配階級が政治面でも経済面でも階級支配を貫いていた。ところが、ブルジョア革命では革命を正当化する理論として民主主義や人権が主張された。

 この結果、資本主義社会は経済面では資本家の利潤追求(プロレタリアにとっては搾取であり、支配になる)が保障されるが、政治的にはプロレタリアも含めた全国民に政治参加の道を開く民主政に行き着く。つまり、ブルジョアは支配階級として固定されている訳ではなく、国家制度もブルジョアにのみ奉仕するものではない。この点において現代社会は階級国家ではない。著者が「則法革命」(法に則った社会変革)を目指すのは、この民主政の歴史的意義を踏まえたからである。

 格差が深刻化した現代日本においてマルクス主義が再評価されることは自然な流れであるが、その場合に暴力革命をどのように考えるかという問題がある。本書はブルジョア革命前後での支配体制の相違を見出すことで、民主主義の枠内で社会変革を進めることに積極的な意義を見出している。現代日本において社会主義を実践する上で理論的支柱となるだろう。
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