『毒笑小説』は小説のタイトルではなく、本書に収められた12篇の短編小説のジャンルとも言える。全体に、社会問題が絶妙に絡み付いた笑うに笑えない内容と結末が多かった。
著者:東野圭吾
出版社:集英社
定価:600円+税
『毒笑小説』は小説のタイトルではなく、本書に収められた12篇の短編小説のジャンルとも言える。全体に、社会問題が絶妙に絡み付いた笑うに笑えない内容と結末が多かった。それでも、後味は決して悪くなく、すっきりした気になるのは、東野圭吾の巧さだと思う。そして、数編読んだところで感想を書こうと思っていたのだが、その前に読破してしまった。
【誘拐天国】
3人の老人が起こした誘拐。この中の1人の孫を勉強漬けの生活から解放してやりたい一心で考えついて実行に移す。お金がふんだんにあり、さまざまの技術もあることから大規模な計画は何なく成功。孫を始めとして次々に誘拐された友だちも大喜びで遊び出す。そして、程よいところで帰すのだが、子どもたちが家に帰ったらやりたいこととは・・・。(これが結末)
我が子の誘拐の時にも見栄を張る誘拐された子の母親(犯人の娘)。私も時々、都心の地下鉄や電車内で見かける哀れともいえるお勉強漬け親子。この話は、痛快と同時に深刻だと思ってしまった。
【エンジェル】
これは、まさに環境問題がテーマ。その対策(京都議定書など)への批判とも受け取れる。一見環境浄化に役立つと思われたエンジェルが、実は・・・というお話。そしてそれに対する人間の行動こそ大問題。
人間は自分たちに都合が良いように、持ち上げもし撃退もする。それは、人間同士も動物も自然も同じではないか?またしても深刻な問題のように感じてしまった。
【手作りマダム】
これは、ウエッと思う内容。話が拙いのではなく、リアル過ぎ、ありがちと思わせるということ。そして、主人公のマダムのすごさがウエッなのであった。私の近くに大会社のサラリーマンが少なく、この話のような環境を身近には知らないのだが、ドラマで良く見かけるような夫人同士のお付き合いの大変さと奇妙さが描かれている。
しかし、落ちはなかなかにシビアでうなってしまった。
【ホームアローンじいさん】
これは、単純に面白かった。深刻になる結末ではなく、そこに至る仕掛けが巧妙で感心してしまった。1人で留守番したじいさんが、日頃から秘かにやりたいと思っていたことを実行するために、孫の電気製品を勝手にいじっても上手く使えず突然作動したものは止められず。
そうこうしている内に泥棒が入って金を要求されるが、じいさんがやたらといじった電話が上手い具合にある所に繋がって・・・。
この電話の操作について、はっきり表現していない所がまた東野の巧さだと思った。私が好きなすっきりエンディングだった。
【巻末特別対談】
東野圭吾と京極夏彦の対談。巻末というより、これも1編の毒笑小説では?と思うほど面白かった。そして、小説に対する2人の考え方の深さに感心した。この思いと考えが上手い話を創り出しているのだと思った。
「笑い」に対する評価の低さについては、私も日頃感じていたので、大いに納得した。
初の東野圭吾作品だったが、はまってしまいそうだ。
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