絵本・童話作家のきむらゆういちさんが、これまでの仕事の集大成とも言える『ひみつの箱』を講談社から出版されたのを機に、お話を聞きました。絵本に描かれた温かさや楽しさのイメージは、きむらさんそのものなのではないかと感じました。
●プロフィール
きむらゆういち
東京都生まれ。多摩美術大学卒業。造形教室、幼児番組のアイデアブレーンなどを経て絵本、童話作家に。「あらしのよるに」で講談社出版文化賞、サンケイ児童出版文化賞、JR賞受賞。演劇「あらしのよるに」で斎田喬戯曲賞受賞。作品に「きずだらけのリンゴ」「にんげんごっこ」「オオカミのごちそう」「風切る翼」など。
ご自身のこれまでの仕事の集大成とも言える『ひみつの箱』(講談社刊)を出版されたきむらゆういちさん(絵本・童話作家)に、『きむらゆういちの世界展』会場でお話を伺いました。
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−あとがきに、きむらさんが本格的に絵を描くきっかけになる出来事があった高校生の頃のことが書かれていますが、特に思い出に残っていることをお聞かせください。
きむら:希望高校の受験に失敗して、入れるところに入ったという感じだったので、入学後は学校のことも忘れて過ごしていました。そんな時に自分が描いた絵がほめられて、『自分にもできることがあるんだ。生きている意味があるんだ。』と思えたんですね。それから夢中になって描き始めました。
それから、高校2年生の時には同人誌を出しました。『虫の寓話』を書いているんです。アリ地獄で下まで落ち切れなかった虫とか(笑)。本当は下まで落ちるようになっている所で途中で止まってしまっても上には上がれない。さてどうするかと言う話です。
−ということは、元々絵と文章の両方をかいておられたのですね。
きむら:はい。私の中では、形を変えて表現しているにすぎなくて、どちらも『自分の表現』ということです。
−これまでに描かれた絵を拝見すると抽象画が多いように思いますが、文章を書かれる時に虫を題材にされたことと共通していますか。
きむら:そうですね。ここ(世界展)にも絵を展示してありますが、最初は写実的な絵から始まって少し具象も混じってごちゃごちゃしたような絵になっているんですね。ところが、最近はまた具象的な絵になってきています。ピカソも『青の時代』『○○の時代』というように変化をしていますね。私の文章もまた同じような変化をしています。これは、自分自身の変化でもあります。
−きむらさんが書かれる話の登場人物は動物が多いようですが、やはりあとがきに『絵本作家になっていたせいか、モチーフは動物が多かった』という表現がありますね。その言葉の意味を説明していただけますか?
きむら:(動物を描くのは)まず、ドラマチックであるということですね。それから、エネルギーの結晶を表すのに、動物が適していると思います。書き始めたきっかけは、たまたまそばにあった、ということなんですが。
−きむらさんの本には、絵と文を両方おかきになったものと文だけのものがありますが、これは書く時点で決めておられるのですか?
きむら:そういう場合もあれば、書いてから誰にお願いしようかなと思う場合もあります。例えば、『あらしのよるに』などは、私が油絵で描くと怖くなってしまいますから(笑)、あべ弘士さんに頼んで本当に良かったなと思います。(筆者注:あべ弘士さんは旭川動物園の飼育係から絵本作家になった方です)
それから、あの人みたいな絵を描こうと思った時期もありましたが、ある時から『私がその人の真似をするのではなくて、組む』という考えをするようになりました。長新太さんと組んで『にんげんごっこ』(講談社刊)を創るということですね。
−きむらさんが描かれる絵は油彩ですよね。絵本の場合は?
きむら:水彩かパステルです。」
−画材によって描き方が違ったりしますか?
きむら:それはないですね。
−描くものによって変えるということはありますか?
きむら:そうですね。イメージがありますからね。
きむら:ところで、今回出版した『ひみつの箱』がちょうど500冊目なんですよ。そこで、こうやって今まで自分がやってきた仕事をいろいろ載せました。たくさんの人に見られることがうれしいと思います。この次の500冊はないですからね(笑)。
−そんなことおっしゃらないで、次の500冊に向けてご活躍ください。
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トークショーが終わった後の展示会場(銀座三越)で、閉店に近い時間にも関わらず、丁寧にまた穏やかに話をしてくださいました。きむらゆういちさんといえば、絵本作家ということしか存じ上げなかったのですが、『ひみつの箱』の文章を読んで、絵本に描かれた温かさ・楽しいイメージは、きむらさんそのものなのではないかと感じました。さらに、実際にお会いしてお話を伺ってそのことを実感することができました。
きむらゆういち公式ホームページ
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