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児童書翻訳家 もりうちすみこさんに聞く

姜咲知子2007/09/13
もりうちすみこさんは、言葉にならない作品の背景や作者の思い、世界観をも翻訳して、読み手に伝えたいと真摯に作品と向き合う児童書・絵本の翻訳家だ。
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■プロフィール<br>
もりうちすみこ<br>
翻訳家<br>
福岡県生まれ。訳書『ホリスウッズの絵』が第52回産経児童出版文化賞に選ばれる。小学校低中学年向けの訳書に『ミミズくんのにっき』(朔北社)、『かしこいブタロリポップ』(アリス館)などがある。
■プロフィール
もりうちすみこ
翻訳家
福岡県生まれ。訳書『ホリスウッズの絵』が第52回産経児童出版文化賞に選ばれる。小学校低中学年向けの訳書に『ミミズくんのにっき』(朔北社)、『かしこいブタロリポップ』(アリス館)などがある。
 もりうちすみこさんは、言葉にならない作品の背景や作者の思い、世界観をも翻訳して、読み手に伝えたいと真摯に作品と向き合う児童書・絵本の翻訳家だ。

―翻訳家になったきっかけは?

 実はキャリアは7年くらいで、2000年から翻訳をはじめました。今まで子ども向けの本を28冊くらい翻訳しました。

 大学卒業後は小学校の教師を5、6年やり、子育て中に児童書や絵本に触れる機会が増え、繰り返し繰り返し絵本を読むうちに、何度読んでも飽きない本もあれば、何度読んでも読みにくい本もあって、子どもの本は何十回読んでも耐えられる本でないとなぁっと思うようになりました。

 その後通訳や翻訳の勉強をしていたのですが、オーストラリアに旅行中に『ジェニー・エンジェル』という作品に出会い、これをどうしても日本で紹介したくて、帰国後、絵本をカラーコピーして、対訳をつけて色々な出版社に送ったところ、岩崎出版からの発刊が決まり、翻訳家として最初の作品を出すことになりました。

 それ以来、絵本や児童書を読んでは、これはと思う本について、翻訳企画をあちこちの出版社に送っています。

―本を選ぶ基準はありますか?

 まず自分が面白いと思うもの、子ども向けなので、日本にない世界を教えてくれて、子どもの内側が本を読むことで広がっていくことが大切だと思っています。本を通して、世界にはこんな人がいて、こんな社会があるっていうことを知ってもらいたいです。

 私自身小さい頃から色々な本を通して世界を広げていたと思うんですね。子どもの頃コサック(編集部注:17世紀のロシアの自治的な戦士共同体)の話がとても面白くて、夢中で読みました。あの時読んでいなければ、コサックの世界に触れることなどなかったと思います。中学生の時、魯迅の「故郷」という作品を授業で読んで、どうしても本文から何を意味しているのかが読みとれない部分があって、先生に質問したところ、私が読みとれなかった部分は、中国の「革命」のベースにあった主義主張が背景にあることを知り、自分の知らない世界を文学から学びました。おそらく、いきなり革命というものを生々しい写真や描写で知ったら受け付けられなかったかもしれないですが、文学の練られた文章の中で出会えてよかったと思います。

―以前JanJanで紹介された『3つの願い』は児童書とは少し違いましたね

 そうですね。『3つの願い』はデボラ・エリスさんが、パレスチナとイスラエルの子どもたちにインタビューをして、実際に紛争地域で暮らす子どもの気持ちを伝える一冊でした。

 この本の前に、デボラ・エリスさんのアフガンを舞台とした少女の物語を、3冊翻訳したのですが、9・11以後良くも悪くも、アフガニスタンや中東の生活、タリバンの情報が日本でも多く流れました。そんな中、私の母が、ニュースでもたくさん聞いているはずなのに、この本を読んで「かわいそう」って涙を流すんですね。その時、本でしか伝えられないことがあると思いました。
左から『ぼくはビースト』『アキンボとライオン』『ドリームアドベンチャー』<br>もりうちさん翻訳の児童書を読者プレゼントいたします!応募方法は記事の最後に掲載
左から『ぼくはビースト』『アキンボとライオン』『ドリームアドベンチャー』
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―翻訳の際に気をつけていることは何ですか?

 やはり、それが実感として伝わらないといけないので、その国や地域に関連するモノに触れるようにしています。アフガンのことを調べるために、中東文化研究所にも行って展示品などに触れてきました。とにかく本や資料はたくさんあたりますし、映画や写真もたくさん見ます。

 長倉洋海さんという方が長くアフガンで暮らして撮った写真は、他の方の写真とはぜんぜん違います。ちょっとした子どもの写真でも生活した視点で撮られています。長倉さんの写真はすごく参考になりました。映画では、地形や生活習慣、着ているものをチェックして、翻訳時の風景描写の参考にしました。アフガニスタンで医療活動をされている中村哲さんの本もアフガニスタン社会を知るうえでとても参考になりました。

 これらの作品は、外国での戦争や差別ですけど、日本にもあることですよね。でも日本のこととなると、なかなか手に取らない、読もうとしない、手渡そうとしても倦厭されてしまう。でも外国のことだった気軽に読むんですね、するとそこにある構造を学んで、実は自分の国にも同じ構造があるってことをわかってもらえるのではないかと思っています。

ー翻訳した中で、心に残っている1冊はありますか?

 やっていくうちに自分が書いたような気持ちになっていくので、どれか1冊と選ぶのは難しいですね。翻訳っていうのは骨まで読書するっていう感じなんです。ただ思い出深い作品といえば、カナダのウィニペグという何もない町を舞台にした10代の女の子のお話ですかね。家を飛び出し、町で恋や人生に苦しむ女の子が主人公なのですが、自分が忘れてしまっていた10代の頃のことを思い出すことができたし、当時高校1年生だった自分の娘の気持ちを考えることができました。

 ウィニペグにも実際行ってみましたが、何もないところで、あの広い場所にたってみないと少女の寂しさと孤独はわからなかったと思っています。

―児童書・絵本翻訳をやっていてよかったなーと思うことは?

 翻訳したいという作品に出会ったら、まず、作者にお手紙を出して許可をお願いするのですが、大体、どなたも喜んでくださり、質問があったら何でも聞いてくださいっていうお返事をいただくんですね。

 デボラさんの、トロントを舞台にした物語を翻訳する際に、実際に見てみようと決めて、当時はまだFAXでしたが、連絡すると喜んで迎えてくださり、会うことができました。他にも交流が続いてる作家がいて、お互いの子どもの様子を伝え合ったりしています。

 ある大阪の中学校の先生が、授業の中で本を使ってくれたこともありました。そのクラスの子達が書いた感想文を全部送ってくれたこともうれしかったですね。

 でも、絵本や児童書の感想っていうのは、子どもの時に聞いても、本当の気持ちはわからないんですね。その子が大きくなって大人の言葉で、子どもの時のことを振り返ってどうだったかを思い出せれば、その本が子どもの心にどんなものを残したかがわかるものなんです。一行でも言葉が心に残っていたら訳者冥利につきますね。

 これからも、好きっていう本を思う存分訳していきたいですね。日本の本みたいって言われるくらい、自然な日本語で翻訳したいと思っています。

 英語では、どんなしゃべりかたでも同じですが、日本語にするときは大人と子どもの関係がはっきりしていないと訳すことができないんですね。“お前”って呼びかけるのか、“君”っていうのか? それは社会の中での言葉ですし、登場人物の関係性にも関わってくるので、日本語にする時にどの言葉を当てはめるか考えつくすのが楽しいです。逆引き辞典もよく使います。ぴったりの言葉が見つかったときは本当にうれしいです。

 私が児童書や絵本を翻訳するのは、子どもに幸せになってほしい、子ども時代に読むものを保障してあげたいと思っているからです。できるだけ面白い本を子どもたちの身近に届けていきたいです。
◇ ◇ ◇
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『アキンボとライオン』『ドリームアドベンチャー』『ぼくはビースト』の中からご希望の1冊をプレゼントいたします。Eメールの件名に希望する本のタイトルを書き、本文にお名前、ご住所、電話番号を書いて、book@janjan.jp 宛てにお送りください。

【応募資格】
本が到着してから10日程度で読んで当コーナーで掲載する感想記事を書ける方。日本国内の住所で受け取れる方。

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