著者は「人種差別とその根絶は単純に、政治的、社会的政策の問題というわけではなく、人間の心の問題でもある」と指摘している。ジム・クロウ法(黒人差別法)はわれわれの心の奥深く潜んでいるのかもしれないとも言う。
著者:ジェームス・M・バーダマン
訳者:水谷八也
出版社:集英社
定価:700円+税
一読してアメリカにおける黒人と白人との人種差別は根強いものだと再認識した。著者のジェームズ・M・バーダマンが指摘するように、ジム・クロウ法(黒人差別法)は「人種差別と白人の優位性を堅固にしていく社会慣習を強要するようになった」で、実体は法律として成文化されているものと、そうでない社会的慣習と絡みあったものであった。そして公民権運動が起こり、激しい闘いの後、公民権を獲得する。
私は皮膚の色は違うが、同じ人間としてこの本を読んだが、ショックを受けた。
白人秘密結社KKK(クー・クラックス・クラン)をはじめ、当時の中流白人たちの黒人に対する差別は半端ではなかった。『第二章 高なる心』からは、白人の黒人に対するリンチにふれ、特に「白人女性に関する違反はどんなものであれ、すぐに集団リンチを招く」。
黒人が正しいことをしても、通用しない社会だった。白人が黒人を殺しても、裁判では必ず無罪になる。裁判を裁くものは白人だからでもあるが。白人優先の社会で、黒人は劣勢人間の位置付けだ。
黒人が普通の人権を獲得しようと長い闘いが始まる。バスの席は、白人と黒人は明確に分かれている。黒人女性が白人の席に座り、無理やり降ろされた。黒人たちはバスをボイコットし、ついに1956年11月、バスのおける人種隔離撤廃を訴える裁判に勝利した。このほか、公教育の差別撤廃、黒人の大学入学問題、ワシントン大行進などにもふれている。
著者は「人種差別とその根絶は単純に、政治的、社会的政策の問題というわけではなく、人間の心の問題でもある」と指摘している。ジム・クロウ法(黒人差別法)はわれわれの心の奥深く潜んでいるのかもしれないとも言う。確かにそう言われれば、私にも差別のこころがあるかもしれない。人権を尊重し、ともに幸福に生きることができるように努力することだ。自分と同じように他人を大切に生きることではないだろうか。