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『ヒバクシャになったイラク帰還兵−劣化ウラン弾の被害を告発する』を読んで

五十嵐孝雄2007/01/25
劣化ウラン弾による放射能汚染が指摘されているが、本書はその実例をイラクに派遣された、米軍の給付学生のケースで克明に報告している。彼は非道な被害に苦しむ兵士や家族たちと米陸軍を相手に訴訟を起こし、核兵器廃絶を目指して闘ってゆく、という。
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著者:佐藤真紀<br>
出版社:大月書店<br>
定価:1400円+税
著者:佐藤真紀
出版社:大月書店
定価:1400円+税
 核分裂を起こすウラン235は、自然界には僅かしか存在しない。これを濃縮したものが核兵器の材料や原子力発電所の燃料になる。そのときに出る「残りかす」が劣化ウランだ。この「核のごみ」を兵器に利用した劣化ウラン弾は、戦車などの堅い装甲を貫き、細かい粉末となって燃え上がり、半永久的に放射線を発しつづける(半減期は44億6800万年)。

 この本は、米軍からの給付で大学に進んでいたジェラルド・ダレン・マシューを中心に展開される。彼は2003年4月、イラクに派遣され、トラック運転手としてイラクとクエートの間を行き来しながら、物資の運搬や爆弾で破壊された戦車、武器の後片づけなどに従事した。半年後、帰国したが、2004年6月、妻・ジャニスとの間に生まれた娘・ビクトリアの右手には指が2本しかなかった。

 ビクトリアの障害の原因を、劣化ウラン弾の放射能であると断定することは難しい。しかし、イラクに行って僅か6日後から同僚も含めて顔が腫れ、激しい頭痛を経験したこと、尿から劣化ウランが検出されたことで、ジェラルドは、劣化ウランの問題を広く社会に訴えなければならない、と思うようになった。

 2005年9月、ジェラルドなどイラク帰還兵8人とその家族合計16人は、アメリカ合衆国陸軍省を相手に裁判を起こした。11月、日本の市民団体の招きで来日したジェラルド、ジャニスの夫婦はまず広島、長崎を訪れ、同じ「ヒバクシャ」として大量破壊兵器の廃絶を目指して闘っていきたい、との思いを強くした。

 アメリカは湾岸戦争でのイラクを初め、コソボ、アフガニスタン、そして2003年以降のイラクで、劣化ウラン弾を使用した。2度、劣化ウラン弾が使用されたイラクでは、90年代半ば以降、小児のがんと先天性異常が増加していることが、統計的に明らかだという。

 劣化ウラン弾の国際的な禁止条約を目指すICBUW(The International Coalition to Ban Uranium Weapons)という市民ネットワークがあり、この本の編著者、佐藤真紀氏も精力的に取り組んでいる。しかし、肝腎のアメリカは地雷や化学兵器、核兵器などの規制にことごとく反対しており、アメリカにもの申せない国、日本は、あいまいな態度を取り続けている。

 サマワが劣化ウランに汚染されているという話もこの本には記述されていて、日本の陸上自衛隊も心配だ。

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